「マジで夏目は強いよな。お前見てたら、元気が出る」
「えー……強くなんかないよ」
これは喜んでもいいことなのかな。
でも、なんだか素直に喜べないんだけど……。
元気が出ると言っておきながら、そう言った水野君の表情はなんだか寂しげに見える。
「なにを言ってもへこたれないところは、わりと本気で尊敬してる」
「へこたれないように見えてるかもしれないけど、実際はへこんでるからね。ガラスだから、大事に扱ってよ」
ムッと唇を尖らせる。
「けど俺、夏目に助けられたところもあるから。それは、サンキューな」
今度はちょっと真剣な表情で私を見下ろす水野君。照れくさいのか、人差し指で頬をポリポリかいている。
「いつ? どこで?」
そんなことをしたつもりは一切ないんだけどな。
「お前と話してると、嫌なことが全部忘れられるっていうか。思い出すこともあるけど、なんか前ほど苦しくなくなった」
「ほんと? こんな私でも役に立ってる?」
なんだか、すごく嬉しいなぁ。
「でも、ガラスだからね。取り扱い注意だよ。もっと優しく扱ってね。水野君、言葉が乱暴だから」
「撤回。やっぱバカだな。夏目といると疲れる」
そう言いながらも、水野君は優しく笑っていた。