「あ、桃! おっはよー!」


背後から弾むような明るい声がした。よく知るその声の主は、中学の時からの大親友、前園 百合菜(まえぞの ゆりな)のもの。

「おはよう、百合菜。朝から元気だね」

「なんだかワクワクしちゃってさ」


百合菜は背中まで伸びた長い黒髪を高い位置でポニーテールにしていたけど、今日はシュシュでハーフアップにした下ろし髪スタイル。

色白でスラリとしている百合菜は、パッチリとした大きな目に、笑うと涙袋ができるとても愛らしい顔をしていて。

可愛いというよりは、美人という方がしっくりくる大人びたお姉さんタイプの女の子。

気立てがよくて優しくて、頼りになる頼もしい存在。
クラスの中心で明るく笑う百合菜は、温かくて太陽みたいな人。

身長も高くてモデル並みのスタイルを持つ彼女は、中学の時はそれはそれはよくモテていた。

運動ができて、頭もよくて性格もいい、非の打ち所がない完璧な女の子。

そんな百合菜に憧れている女子はとても多くて、実は私もそのうちの一人だったりする。

だって私はなにをとってもいたって平凡なんだもん。

せめて一つくらい、自慢できるところがあってもよかったのに……。


なんて、完璧な百合菜といるとネガティブ思考になることも多々ある。

だけど次の日になればすぐに忘れてしまうのは、私の楽観的な性格なのだろう。

そんなところは自分でも楽だなと思う。