月に叢雲花に嵐

嬉しい。
出て行ったわ。
でも、こんな生活は、もう、耐えられない。

「榮妃は、帰られましたよ。燕お嬢様。」

榮妃は、吾の母の名。
榮莉鸞と言う、顔だけは良い女だ。

こんなのが母でなければ。

そうしたら、こんな襤褸を纏わされて牢獄のような建物に押し込められなくてすむのに。

「お嬢様、これ。」

唯一残った侍女が、私に薄物を一枚、差し出した。

「まぁ。」