月に叢雲花に嵐

「………これを、閉じ込めておきなさい。いいこと?妾が良いと言うまで、よ。」

昔、女で言っていた。

忘れたい、だが、忘れることの出来ない、過去の話。

きつい香の匂いに鬱陶しい程に纏われ、ゴテゴテと着飾った女だった。

「妾(わらわ)はこんなのが欲しかったわけじゃないのよ。」

こんなの?
吾(わたくし)が、その程度。

「燕は、消えたことにしておきなさい。」

女は笑っていた。
始めてみる、清々しい笑みであった。