その日、シャワーを浴びながら、隣の同期のが言った事を思い出していた。


― 門馬雪人を気に入っているって、新入社員の中で噂だぞ -


私は顔を手で覆いながら、ため息をついた。

煩わしい。

誰が誰を気に入っているとか、学生でもあるまいし、そんな事で仕事が左右される訳がない。

ううん。

本当は、社会って言うのは、そう言う”えこひいき”の世界で、より早く上司のお気に入りになった方が、勝ちなのかも。


私は、シャワーを止めた。

大体何で、私がこんな事に悩まなきゃいけないの?

もう社会人になったんだから、それくらい分かりなさいよ。

ったく。

これだから、いつまでも学生気分は困るわよ。


意味のない怒りに、私はさいなまれていた。

シャワー室を出て、パジャマを着ると、一目散に冷蔵庫に行き、ビール缶を取り出すと、それを一気に飲んだ。

はぁーっと、大きく息を吐くと、胸の中のモヤモヤが一気に消し飛んだ。