「おい、9時だぜ。」

隣の同期に声を掛けられ、私はハッとした。

「ありがとう。」

「ああ……」

資料を持って立ちあがり、椅子を押した。

同期の目が、私に注がれる。

「じゃあ、行ってくるのでお願いします。」

一応、同期の皆に声を掛けたつもりだけど、誰も”はい”とは言ってくれない。

私は、知らない振りをして、ミーティング室に向かった。


心が重い。

どんなに能力を買って貰っているからって、一人だけ昇格するのは、気が沈む。

どうして私だったんだろう。

部長は、何を考えていたんだろうか。


― 清水にはもっと上の仕事を…… -


いくら部長の力があったって、もし次の昇格の話が出たら、申し訳ないけれど、断ろう。