あれからすぐ携帯に着信があった。
同じ番号がディスプレイに表示された。

僕はため息まじりに渋々通話ボタンを押した。

『はい。』

『ごめーん。寝てた?瞳です。』

甘ったるい声が電話越しだと更に増して聞こえた。

『どした?』

僕は簡潔に用件を聞いた。
二日酔いで頭が痛いのと、何か良からぬ胸騒ぎがしたからだ。

『ちょっと一馬くんの事で相談があるんだけど、今日時間ないかな?』

僕が『電話じゃ無理な事?』と聞こうとしたらかぶせるように

『夕方にハルくんの地元の辺に用事があるんだけど。時間は合わせるから!』

僕は断るタイミングを失った。

子供の頃から頼み事を断れない性格が仇となった。どうしても相手の心情を察して自分の意見が通せなくなるのだ。

それなのに僕は冷たい人間だと言われる事が多かった。

瞳とは少し離れた公園で待ち合わせをした。

何も気を使う必要はなかったが、どこで誰が見ているか分からなかった。

その公園はだだっ広い運動広場のような所だ。
子供が遊ぶような遊具は一切なく、サッカーやテニスができるようになっている。

昼間は人気なウォーキングスポットだ。

公園の西口に着くと、約束通り瞳の軽四自動車があった。

真っ赤にコーティングされ、窓の至る所に可愛らしい細工が施されたソレは瞳そのものだった。