「ほんと?じゃあね、ビーフシチューがいいなあ」


誠司さんの顔が、急に少年のように輝く。



ビーフシチュー?

確か、あの本の真ん中らへんに、
レシピが載っていた…。




「あ、冷蔵庫見ていいですか」

「もちろんもちろん。茶織ちゃんは、お料理選抜だから」





どういう意味だろう。



とりあえず、訳もわからずに
ビーフシチューを手作りした。




「……間違いなかった」
「これはいける」


急に誠司さんのひとり言が増える。



「あの、おいしかったですか?」


はっと我に返り、

「もちろん!!!これからも毎日作って!茶織ちゃん、勉強そんなに大変じゃないんでしょ?」


「あ、はい。三年生のゼミが始まって、四年生からは就活あるんですけど、それまでは特に」




「…就活…就職…」


結構、ひとり言、多いんだな。

なんだか、それさえもそばで見ていたいと、


そう思った。