「文化祭、有志発表あるだろ?」

「あ、うん。あるね」

「それで、千歳ってギター弾けるんだったよな?」

そう。わたしはアコギを持っていて、どのコードも無難に弾ける腕前だ。

ギター、有志発表…。何か嫌な予感がする。

「俺とさ、やらない?有志発表」

やっぱり…

「で、何やるの?」

「実はさ、俺もギター弾けるの。だから、2人でギター弾いて、歌うんだよ。うーん。昔流行ってたさ、『ゆず』の男女版、的な!」

彼が珍しく興奮気味に言うものだから、わたしも少し、やってみたくなる。

「いや、でも。もう2週間くらいしかないけど…?」

「まぁ、大丈夫っしょ」

既存の曲を弾くだけだったら、何とかなりそうな気もするけど…。

「どうせなら、オリジナルでやってみない?」

彼はわたしの期待をとことん裏切ってくる。

さっき言ったじゃん、あと2週間だって。




「もう詞は出来てるからさ…」

呆けるわたしをよそに、彼は机の中から一枚の紙を取り出した。

「『マリオネット』…?」

「そう。マリオネットを日本語にすると『操り人形』。俺なりに色々考えて書いたからさ。千歳はこれに曲を付けてくれないかな」

尋ねているようだけど、その言葉には有無を言わせぬ響きがあった。

「まぁ、取り敢えずやってみるか…」

わたしは仕方なく受け入れた。

すると彼が言う。

「文化祭の3日前にオーディションがあるから、それまでに完成させないと」

そうだった。それまでに合わせたり、練習もしたい。

それまでには時間がなくて、もう、始めるしか無かった。