モクモクと湯気を漂わせながら、彼が脱衣所の扉を開けて出てきた。

「いいお湯だったよ。千歳も入ったら?」

「ちょっと、自分の家みたいに言わないでよ。ていうか、わたしは入らないから」

「入らないって、…不潔だな」

「女の子にそんなこと言わないの。嫌われるよ」

「いやいや、ごめん。お願いだから嫌わないで」

彼の必死さに、わたしは思わず吹き出しそうになる。

「あんたのこと、嫌いはしないけど、相当怪しんでるよ」

「まぁ、そうだろうね」

彼は勝手にわたしのベッドに身を投げて、ボフンと音を立てて沈めた。

「もー、わたしの寝るとこ無くなるじゃん」

「え?本当は一緒に寝れるって喜んでるくせに」

「喜んで無いし」

そもそも、よく知らない奴と寝るなんて、この上ない恐怖である。

床やソファで寝るのは嫌だったから、仕方なくわたしは、ベッドに入った。