君と奏でる、永遠のメロディー

ペンキの剥がれ落ちた木製の扉を開けると、独特の暖かな空気と、木と紙の香りがわたしを包んだ。

彼はカウンターへ向かい、本の返却をしている。

10メートル近く離れているけれど、

「この本どうだった?」

「凄く面白かったです」

彼と図書室のおばさんの話す声が、はっきり聞こえるくらいの静けさだった。




「お待たせ」

入り口の真ん前で突っ立っているわたしのもとに、彼は歩み寄ってきた。

「何ボケーっとしてんだよ」

「別に」

「何かあったんだろ?そんな考え込んでさ」

そして彼は、わたしの話を聞いてくれた。

『うん』とか『へぇ』と相槌を打ち、最後には、

「そうか、…大変だなぁ…」

と、わたしの頭をポンポンとした。

何だか照れ臭くしていると、

「千歳ー!」

と呼ぶ声がしたから、

「ごめん、もう行くね」

そう言って、図書室を出た。




彼のおかげで、心がスッと、軽くなった気がした。