「ん、じゃあさ。きみが思い出せるまで、俺を家に置いてくれないかな」

「え?」

「実はさ、俺 家無くてさ。ほんと、思い出すまででいいから」

いやいや、そういう問題じゃ無くてさ。

「もちろん、タダでとは言わない。朝・夕の飯は俺が作ってやるからさ。な?」

そう言って、ニカッとモンダミンとかのCMみたいな笑顔をする。

「ていうか、ついてきて良いって言ってないし。そもそも、名前くらい言ったらどうなのさ」

「ああ…。俺はコウセイ」

男は穏やかに答える。

「字は、どうやって書くの?」

「光に星でコウセイ」

「ふうん」

わたしは言い、足を速めて自宅へ向かう。

すると、その光星とかいう男もスタスタとついてくる。

「もう一度行っておくけど、わたしは来ていいなんて言ってないから」

釘をさす。

「素直じゃないなぁ、千歳は…」

溜め息混じりに言ってくるから、わたしはもう、諦めるしかなかった。

全く、溜め息を吐きたいのはこっちだよ。