部屋のベット向こう側に、クローゼットがある。

ベットを回り込んでクローゼットを引き開ける。

と、吊り下げられた洋服と、床に置かれた楽器が現われた。

ソフトケースに入ったものと、むき出しの楽器。

その下には、四角い箱状のものがある。

アンプ、かな。

羽はケースのファスナーを下げて、中身を少し見せてくれる。

ボディーがシルバーのベース。

外でむき出しのは暗い色の木目なベース。

木目な方が、羽ちゃんが、ライブの時使ってるもの。

どっちも、あたしも好みな見た目。

「何を演奏してほしいんだろう。希望訊いてくれた?」

「あ、まだ。でも、しっとりした感じじゃなくて、派手に演奏して欲しいっぽかったよ。正確には披露宴で演奏し
てほしいんだよね。結婚式は身内でやって、披露宴は友達とか、仲間だけでやるんだって」

「ツカサは、出席するんだよね?」

「うん」

「…先輩なんだよね。ツカサは他に知り合いとかいるの?」

「…いない」