断りなく触って。あと、思いっきりぶつかって。

慌てて退こうとしたら、腕を回されてそのままつかまってしまった。

あたしは顔を上げる。

絶対、酔っぱらってるよな。

でも、見下ろした目は思ったよりは優しそうで冷静そうで。

一瞬、ガッチガチのカギが粉砕されそうになった。

「せっかく来たんだし、もうちょっとそばで飲まないかなと思って」

そばって、隣とかのことを言わないかな。

あたしは慌てて、もろくなってる鍵を掛けなおす。

羽の両肩に手をつくようにして、自分の身を引きはがす。

その視線のせいで、

目の前の羽の胸に、すーっと線のような傷が現れて、ぱくって口を開けるのが見える。

えっ、あたしのせい?

血を吐き出す前に、とっさに手で塞ぐ。