吐露するキズ跡

「羽ちゃんの演奏してるとこ、滅茶苦茶カッコ良いから」

羽は黙ってしまう。

こういう攻撃に弱いらしい。

「だから、絶対羽ちゃんにお願いしたかったんだ。ダメなら…せめて誰か紹介して欲しい」

羽は黙ってちょっと考える。

それから、

「...いいよ。オレ、引き受ける」

あたしの顔は 

嬉しくてゆるむ。

「本当に?ありがとう。あ、」

うん?

と羽がこっちを見る。

「演奏してない時でも、カッコいいよ。羽ちゃん」

結構、頑張って言ったのに、

「それはどうも」

受け流される。

「悔しい。言われ慣れてるから、相手にしてくれない。いててて。心が痛い。羽ちゃんがヒトの心を弄ぶよー」

心臓を押さえてフラフラのフリをしてやる。

「...どっちが」

羽につぶやかれる。

「あ」

「え?何?」

「引き受けてもらう前に、大事なこと確認しなきゃいけなかったんだ」