吐露するキズ跡

「…それは、そうだね…。何とかしてあげたいけど、あたしには何にも出来ないんだろうなって」

「…座って」

テーブルの椅子に座る。

と、向かいじゃなくて、隣の椅子に羽が座る。

なかなかに近い距離。

羽の中に入っていた、サヤトの距離感も近かったから、サヤトの距離感が近いのだと思ってた。けど、そうじゃな
くて、羽自体のヒトとの距離の感覚が近いのじゃないだろうか。

思ってしまう。

それとも、自分が遠いのか?

心を開かないヒトらしいから、そういう感覚まで影響してるのかも。

「で?直接来ないといけないほどの用事って何?」

「あのね、結婚式で、演奏して欲しいんだ」

「結婚式?」

「うん」

「誰の?ツカサの?」

「何で、羽ちゃんにフラれる前から、ヤケクソ婚しないといけないの。あたしはまだまだ、独り暮らし続行するっ
てさっき宣言したのに」

「そうだった。それ聞いて、あんまりそういうこと言ってると、本当にそうなるよって言いたくて振り返ったん
だ。ツカサが予想外の反応するから、すっかり忘れてた」

言って、クスっと笑われる。

「ヤケクソ婚って」

そこに反応しちゃうんだ。