吐露するキズ跡

かわいく整った見た目で、公務員で、お年頃で、きっと、冗談でも本気でも、よく言われるんだと思う。

羽は、普通に、かわしてくれた。

あたしは振り返って、カチンと無意識に鍵を下す。

で、

「独り暮らし長いと、そういうの、抜かりないよな」

嫌味なのか何なのか、よくわからない発言をされる。

「ごめんね、独り暮らし長くて。お陰さまで、まだまだ続けるつもりだけど」

廊下を、リビングに向かって歩いていた、羽が振り返る。

すぐ後ろを歩いていたから、背中にぶつかりそうになる。


その距離感で、羽を見上げてしまって 

自爆する。

何でこのヒト、こんなに好みな姿なのだろう。

ダメだ。

心拍数おかしいし、顔が真っ赤になるのがわかる。

つい、顔を押さえてうつむく。

「ごめん、急に」

言って、クスっと笑われる。

「オレにまで、そういう反応してるようじゃ、独り暮らし終われる日なんか、ずっとずっと先だね」