先に、心臓が気が付いた。

急に弾んで。

あ…あの後ろ姿、羽ちゃんだ。

いつもと違う、一本早い電車に乗れる時間。

少し先に見慣れた背中。

先に誰だかわかったせいか、

後ろ姿でも、可愛い雰囲気がにじんでいるように見える。

嬉しくなって、足を速める。

真っすぐに歩いていく彼。

気付かれないように、真後ろまでたどり着く。

でも、どうしよう。

何て声をかけていいか分からない。

歩調が緩む。

…と、不意に彼の方がくるりと振り返った。

「おはよ」

寝起きに声が出ないタイプなのだな。

いつもよりさらに、空気にとける声。