なのに今、翡翠の財布には4万ちょっとしか入っていない。
正確には4万1千円。
枚数的には変わりないが、金額的に変わっている。
枚数を合わせてくるという猪口才《ちょこざい》な細工が、余計に「元はあった」という事を示している。
当然、外部から誰かが侵入した形跡はない。
そもそも本当の泥棒が入ったのなら、わざわざお釣りまで入れて9千円だけ持っていくなんて事はしないだろう。
そうなると、藤堂家で暮らしているのは長男の翡翠と次女の藍子だけだから、犯人は決まったも同然。
翡翠の視線の先にいる藍子の顔は明らかに動揺している。
「え? 何?」
「我が家に泥棒がいる」
誤魔化そうとしているのが丸分かりな藍子の声に被り気味で翡翠は言葉を繰り返した。
更に動揺の色を濃くした藍子は、スッと翡翠から目を逸らす。
基本的に藍子は嘘や誤魔化しが下手くそだ。
それが証拠に。
「ど、泥棒って?」
正確には4万1千円。
枚数的には変わりないが、金額的に変わっている。
枚数を合わせてくるという猪口才《ちょこざい》な細工が、余計に「元はあった」という事を示している。
当然、外部から誰かが侵入した形跡はない。
そもそも本当の泥棒が入ったのなら、わざわざお釣りまで入れて9千円だけ持っていくなんて事はしないだろう。
そうなると、藤堂家で暮らしているのは長男の翡翠と次女の藍子だけだから、犯人は決まったも同然。
翡翠の視線の先にいる藍子の顔は明らかに動揺している。
「え? 何?」
「我が家に泥棒がいる」
誤魔化そうとしているのが丸分かりな藍子の声に被り気味で翡翠は言葉を繰り返した。
更に動揺の色を濃くした藍子は、スッと翡翠から目を逸らす。
基本的に藍子は嘘や誤魔化しが下手くそだ。
それが証拠に。
「ど、泥棒って?」

