あたしを心配して、琢ちゃんと一緒に図書館の近くまで探しに来てくれてたお姉ちゃんに、ファミレスの前で頭をグーで殴られた夜。


すっかり熟睡してたあたしが目を覚ましたのは、仄《ほの》かな石鹸の香りとお酒が混じった匂いに包み込まれた所為。


目覚めた直後に背中に感じる熱に、


「お兄ちゃんお酒臭い……」

モソモソと動いて体を反転させると、ギュッと強く抱き締められた。


「んー、今何時ぃ?」

「3時過ぎ」

「早いねえ……」

「暇だったから早めに店閉めたんだよ」

「あー、そっか。暇だったんだあ……」

「何ブツブツ言ってんだ。寝惚けてないで目ぇ覚ませ」

「んー、お兄ちゃん、二日酔いは……?」

「とっくに治ってる」

「そっか……」

「おい、起きろって」

「……眠い……」

「目ぇ開けろ」