「気にすんな! 女は顔より『あいきょう』だって翡翠君が言ってた!」

「……へえ」

「あいきょうって何か知らないけど」

「だろうね」

「なあ、藍子。逆上《のぼ》せてきたからもう出ていい?」

「え? 琢ちゃんまだ体も頭も洗ってないよ?」

「うん。今日はいいや」

「何ひとつよくないよ」

「今日は疲れてるから」

「意味が分からないよ」

「昼間、公園で遊んだからすっげえ疲れたんだ」

「尚更洗わなきゃいけないよ」

「だからもう出ていい?」

「ねえ琢ちゃん、あたしの話聞いてくれてる?」

それから5分以上琢ちゃんと揉めた末、あたしが洗ってあげるという事で何とか事が収まったお風呂は、結局全部が終わるまでに入ってから30分も掛かってしまった。


お風呂から出ると食卓に、温かい夕食が用意されてた。