琢に問い掛けながら心実がチラリとトワを見遣ると、ちょうど靴を脱ぎ終わって上がり框に上がったトワと目が合う。
目が合ったトワは「大した物じゃないよ」と微笑み、母子にゆっくり近付いた。
「じんべだって! じんべ!」
「じんべ?」
「うん! 明日の祭りに着る用だって!」
「ああ、甚平ね」
はしゃぐ琢に心実は返事をして、「悪いね」と目の前まで来たトワに声を掛ける。
わざわざこんな事しなくてもいいのに――と思ってはいても、心実はそれを口にはしない。
買う前になら「そんな事しなくてもいい」とは言うが、買ってきた物に対してそんな事を言うのは、折角買ってきてくれたトワに失礼だという事を分かっている。
そして、そこまで読んでトワが買ってきた事までも心実は分かっている。
当然トワも心実が全て分かっている事を理解している。
だから見つめ合うふたりの視線には色んな意味が込められているのだが、
「見ていい!? どんなのか見ていい!?」
琢には何も分からない。
今にも小躍りしそうな勢いの琢に、「いいよ」と返事をした心実は、
目が合ったトワは「大した物じゃないよ」と微笑み、母子にゆっくり近付いた。
「じんべだって! じんべ!」
「じんべ?」
「うん! 明日の祭りに着る用だって!」
「ああ、甚平ね」
はしゃぐ琢に心実は返事をして、「悪いね」と目の前まで来たトワに声を掛ける。
わざわざこんな事しなくてもいいのに――と思ってはいても、心実はそれを口にはしない。
買う前になら「そんな事しなくてもいい」とは言うが、買ってきた物に対してそんな事を言うのは、折角買ってきてくれたトワに失礼だという事を分かっている。
そして、そこまで読んでトワが買ってきた事までも心実は分かっている。
当然トワも心実が全て分かっている事を理解している。
だから見つめ合うふたりの視線には色んな意味が込められているのだが、
「見ていい!? どんなのか見ていい!?」
琢には何も分からない。
今にも小躍りしそうな勢いの琢に、「いいよ」と返事をした心実は、

