「ええ!?」
「急げ! 急げ!」
「もおおお」
溜息交じりに声を出した藍子は、それでも琢の言うままにクローゼットから黒のジャケットを取り出した。
すぐにそれを引っ手繰った琢は、ボタンが2段ズレて留まっているシャツの上に羽織り、
「髪の毛して! 髪の毛!」
クローゼットの前から、黒いチェストの前に移動する。
チェストの上には翡翠が髪をセットする時に使うムースの類と鏡が置いてあり、少し身長の足りない琢は精一杯の背伸びをして鏡に自分の姿を映した。
「髪、どうするの?」
「翡翠君みたく」
「あたし、お兄ちゃんみたいに上手に出来ないよ?」
「藍子は不器用だからな」
「自分でやってみる?」
「手がベタベタになるからやだ」
そう答える辺り、琢は何度か自分でやってみた事があるらしい。
だが藍子は琢の言葉からそこまで悟る事は出来ていない。
藍子に出来る事と言えば、「仕方ないなあ」などと言いながらムースを手に取る事くらいで、結局最初から最後まで琢の言いなりだったりする。
「急げ! 急げ!」
「もおおお」
溜息交じりに声を出した藍子は、それでも琢の言うままにクローゼットから黒のジャケットを取り出した。
すぐにそれを引っ手繰った琢は、ボタンが2段ズレて留まっているシャツの上に羽織り、
「髪の毛して! 髪の毛!」
クローゼットの前から、黒いチェストの前に移動する。
チェストの上には翡翠が髪をセットする時に使うムースの類と鏡が置いてあり、少し身長の足りない琢は精一杯の背伸びをして鏡に自分の姿を映した。
「髪、どうするの?」
「翡翠君みたく」
「あたし、お兄ちゃんみたいに上手に出来ないよ?」
「藍子は不器用だからな」
「自分でやってみる?」
「手がベタベタになるからやだ」
そう答える辺り、琢は何度か自分でやってみた事があるらしい。
だが藍子は琢の言葉からそこまで悟る事は出来ていない。
藍子に出来る事と言えば、「仕方ないなあ」などと言いながらムースを手に取る事くらいで、結局最初から最後まで琢の言いなりだったりする。

