「えー」

「手、俺の肩に置け」

「えー」

「早くしろよ」

「えー」

「おい、藍子」

「えー」

「時間ねえんだろ」

「えー」

「はい、タイムオーバー」

そう笑って藍子の両足の間に体を入れ込んだ翡翠は、躊躇う事なく藍子の中に入っていく。


その衝撃に、藍子はまるで溺れて何かにしがみ付くかのように翡翠の肩に両腕を回し、背中を掻き抱いた。


ふたりの熱が混じり合い、部屋の中の温度と湿度が上がっていく。


翡翠の額には汗の玉が浮かび、藍子の体もじっとりとしている。


それでも途中でクーラーの温度を下げる余裕もない翡翠は、組み敷く藍子の頬に、ポタポタと何粒もの汗の滴《しずく》を落とした。


「藍子! 遅刻するよ!」

階下から聞こえてきた心実《ここみ》の声に、


「10分待て!」