「大きくなったよねえ」
「オレ、幼稚園の中で2番目に背が大きいんだ。――先に風呂入ってるな」
お兄ちゃんみたいな口調でそう言った琢ちゃんが、まだ制服を脱ぎ始めたばかりのあたしを置いてさっさと浴室に入っていくから、あたしは急いで支度をして後を追った。
浴室に入ると、琢ちゃんは浴槽のお湯に浸かってて、
「琢ちゃん、今日は髪洗う日だよ」
そう声を掛けるとあからさまに「ゲッ」って表情を作る。
その上で。
「昨日洗った」
すぐバレる意味のない嘘を吐く。
「琢ちゃん、それは毎日一緒に入ってるあたしに通じる嘘じゃないよ?」
「嘘じゃねえし。洗ったし」
「嘘だね。洗ってないね」
「藍子が覚えてないだけだ」
「ちゃんと覚えてるもんね」
「藍子が見てない時に洗った」
「ずっと見てたけど洗ってないね」
「何だよ、藍子。意地悪言うな」
3年も一緒に暮らしてる所為か、琢ちゃんの口調は時々お兄ちゃんを思わせる。
「オレ、幼稚園の中で2番目に背が大きいんだ。――先に風呂入ってるな」
お兄ちゃんみたいな口調でそう言った琢ちゃんが、まだ制服を脱ぎ始めたばかりのあたしを置いてさっさと浴室に入っていくから、あたしは急いで支度をして後を追った。
浴室に入ると、琢ちゃんは浴槽のお湯に浸かってて、
「琢ちゃん、今日は髪洗う日だよ」
そう声を掛けるとあからさまに「ゲッ」って表情を作る。
その上で。
「昨日洗った」
すぐバレる意味のない嘘を吐く。
「琢ちゃん、それは毎日一緒に入ってるあたしに通じる嘘じゃないよ?」
「嘘じゃねえし。洗ったし」
「嘘だね。洗ってないね」
「藍子が覚えてないだけだ」
「ちゃんと覚えてるもんね」
「藍子が見てない時に洗った」
「ずっと見てたけど洗ってないね」
「何だよ、藍子。意地悪言うな」
3年も一緒に暮らしてる所為か、琢ちゃんの口調は時々お兄ちゃんを思わせる。

