普段以上の売り上げを作らなければという使命感のようなものまで感じ、恋人の心実に電話をする時間を削り、昼間から営業の電話やメールをし続けた。


自分でも、こんなに営業を掛けたのは、ホストをしていた時以来だと思った。


ホストを辞めて【Crown】で働くようになってからは、そういう事も減っていた。


全くしなくなったという訳でもないが、必死になって営業を掛けなくても、ホストクラブよりも格段に値段の安いバーには客が来る。


しかもホスト時代に【Kingdom】での売上と指名数が共に上位だった翡翠とトワがいるバーとなれば、より一層客が増える事は言うまでもない。


【Crown】は開店当初から流行っていた。


そんな中でトワが掛けた営業は更なる客を呼び、翡翠が【Kingdom】に行った初日の【Crown】は、早い時間から満員御礼状態だった。


翡翠目当てに来た客が、翡翠がいない事を知って少しがっかりする事はあったが、そこはトワの、心実曰く「悪魔の微笑み」で乗り切れた。


深夜の0時を過ぎると、仕事終わりのホステスやキャバ嬢の来店で更に客が増え、トワを始めとする従業員はエアコンが効いてるにも拘《かか》わらず額に薄っすらと汗を掻くほど忙しかった。


そんな大賑わいの【Crown】に、【Kingdom】のマネージャーの海斗がひょっこりと顔を出したのは深夜2時前の事。