「こっち使って、こっちで寝る」

ホテルの部屋に入ってすぐ、ベッドの一つ一つを指差して言った翡翠に、藍子は「はーい」と返事をしてバスルームに向かった。


これも毎度の事なので、藍子は何とも思わない。


翡翠がツインの部屋にする理由は、ベッドが1つではナニの後はシーツがグチャグチャになって寝れる状態ではなくなるから。


いつもはそんな事はない。


そんなに酷く乱れはしない。


ただこの時は、藍子がテスト勉強をする期間、ずっと我慢し続けていただけに、翡翠も加減が出来なくなる。


だからこそのツインの部屋になる。


ふたり入ると狭くなるバスルームに無理矢理ふたりで行き、浴槽のお湯にすし詰め状態になりながら入る。


お湯の中で藍子を背中から抱き締める翡翠は、何度も肩口に唇を落とし、藍子の髪からするシャンプーの匂いに興奮する。


「あのね、お兄ちゃん」

「うん?」

「さっき焼肉食べながら言ってた話だけど」

「何の話だ?」

「テストの。補習受けなくていいかもって話」

「うん。それがどうした?」