今さらだけど



ーーー千紗...?泣いてるのか...?



俯き涙する私を心配そうに見つめるきみ。



ーーーただ泣いてちゃ分かんねぇよ...



そう、私はただ泣くだけだった。



ーーーおい、どうしたんだ??



困った顔で私の肩を優しくさする。



ーーーまぁ...いつもだよな。千紗は俺には何も言ってくれないよな。



悲しそうな顔で、小さく笑いながら。



ーーーごめんなぁ、頼りなくて...。



そして、いつも謝るんだ。

私はこうやってきみに何度「ごめんね」と言わせてきただろう。


ほんとは話したかった。


言いたかった。


伝えたくてたまらなかった。


「すき」って。


きみのことが好きだから泣いてるんだよって。


でも...今さらもう言えないよ。


だってきみはもう......。









ーーー


爽やかな風が出窓に吹き込み、真っ白なレースのカーテンが大きく膨らむ。


「...んんん」


日差しがあまりにも眩しく、私は瞼をなかなか開けられずにいた。


ぼんやりとした視界の中、私は何とか体を起こし、大きく伸びをした。


「はあ...眠い......」


寝起きで無造作に絡まった髪の毛を、更に乱すかのように右手でぐしゃぐしゃっとさせた。


なんて事のない通常の朝。


その時だった。




バタンッーーー


激しく部屋の扉が開く。


それと同時に「千紗!も~~こんな日にまであんたはいつまで寝てんのよ~~!はやく起きてちょうだい!」という、甲高い声が部屋中に響いた。


「お母さん...」


そこにあったのはエプロンを身にまとったお母さんの姿。


「化粧でもしてんのかと思ったら寝ぼけた顔しちゃって、まったく。色々手伝ってほしいことがあったのに、あんたって子は本当にお気楽でいいわね。」


「お母さん...頼むから朝からそんなデカい声出さないでよ...。心臓に悪いわ...」