そう言って真冬は悔し気に唇を噛んだ。
 
本心では分かっていた。

本当に怒っているのはイブに対してではない。

何もできない無力な自分自身に対してなのだ……と。

「大丈夫、マフユ? 私にできることがあるなら言っていいんだよ? 私はいつだってマフユの味方だから」

「じゃあ教えてよ! どうして僕はここにいるの? 何故ここの人たちは凍り付いてしまったの? どうすれば僕は……解放されるの?」

「最後の一つに対してはもう答えたよね、マフユ」

「……ッ」
 


言葉を失うマフユに……イブは筆とパレットを置いて立ち上がり、真冬の頬を小さな掌でそっと包み込んだ。

「いいんだよ。私自身は、真冬のことが大好きだからずっとずっと傍にいたい。だけど、もし真冬がそれを望まないなら――」

「そんなこと言ってないよ! 僕だって……僕だって……」


「――僕も本当は、イブのことが好きだ」
 

そう言って、雪が降りしきる中で真冬はイブを抱きしめた。
 
それは紛れもない本心だった。

実際のところ……イブを初めて見た時にその美しさに触れた瞬間から、真冬は彼女に惹かれてしまっていたのかもしれない。

「……ありがとう、マフユ」
 
そう儚げに呟く彼女の小さい体は、とても柔らかくて……この世界の何よりも、暖かかった。