「はあはあはあ」

化学室は三階にある。

階段を一階から駆け上るのは息がきれる。

化学室のドアを開けた。

仲には和海しかいなくて、和海は窓を開けて外をぼーっと眺めていた。

「和海」

和海がこっちを振り向いた。

「戻ってこいって」

「ああ」

和海からは黒いオーラはすっかり消えていた。

「有紀」

和海の声が弱々しい。

「何?」

少し不安になる。

和海に何かあったんだろうか?

「いや、ごめん」

……………………………………………………………………………………………………………え?

和海が謝った?

「あー、えーっと何のこと?」

私の思考はフリーズしそうだ。

「流石にここまで束縛が激しいのはあれだろ」

どれですか?

「このままじゃ有紀に嫌われるから」

「ちょ、ちょっと待って!全然分かんないから」

まず、束縛って何?

なんで私が和海を嫌いになるの?

「………………………………は?分からないか?」

いつもの和海に戻った。

「全く。説明してくれると」

「ならいい。はあー、俺の早とちりかよ」

和海はまた外を見た。

何だったんだ?

早とちりって?

気になるけど聞いてはいけないような……。

まあいっか。和海が元に戻ったみたいだし。

「和海、行くよ」

私は和海に言った。

「ああ」

和海はドアの前に立っている私の方に来た。

チュ

「っ///」

不意打ちのキスは心臓に悪い。

「行くか」

和海は私の手を掴んで生徒会室の方に歩き出した。