おそらく染めたのだろう茶色の髪の毛、目にかかった長めの前髪の下からは鋭い眼光が光り、眉間には跡がつきそうなほど皺が寄っている。その恐ろしさのせいか、彼が入ってきた瞬間、教室内は一瞬静まり返った。

彼は、黒板に張り出された紙で自分の席を確認するとまっすぐ私の隣へ座った。長く細い足は机の下に収まりきらず、窮屈そうだ。ピシッときこなした制服と、左胸にぶら下がった〝入学おめでとう〟のリボンがこんなに似合わない人はいるだろうか。

その容姿はあまりにも教室とは不釣り合いだった。入学式をサボって屋上でタバコを吸っていそうな彼は、一言で言えば「ヤンキー」というやつだと、おそらく教室内の全員がそう思っただろう。


地味なわたしとは一生関わることのなさそうな隣の席の男の子は、夏目 空(ナツメ ソラ)くんと言うらしい。