西の辺境に住む民はエルドシータとも呼ばれ、エナスケア大陸の西、リンドブルム山脈を臨む辺境に集落がある。十七歳で成人と認められ、旅に出る事が許される。

 彼らは旅先で親のいない、もしくは捨てられている子どもを拾い育てる慣習がある。そのため、顔つきや体格に統一された特徴はみられない。

 成人を迎えるとほとんとが旅に出る。それ故か、名のある戦士や騎士には西の辺境の民の出身者が多い。

[なるほどのう]

 それならば合点がいく。

 それにしても麗しい。本当にこの者は一人でいたのかと、拾った者を疑わしく思うほどに壮麗である。

[そなた。ほんに人間か]

「エルフにでも見えるか」

[うぬ──]

 どのように見ても、この者は人間にしか見えぬ。されど、ふとして思わずにはおれぬのだ。