[誇りとはなんぞや]

「内に燃ゆるものだ」

[そのこころは]

「ただ己のみ熱くさせる」

 何者の言葉にも揺らぐことなく、消えることもない。

[ほうほう]

 これは面白い。今までにない返答だ。

 容姿だけでなく、この者の思考にも興味が湧いた。こんな草原に一人でカルクカンを連れているということは──

「そなた。放浪者(アウトロー)か」

「そうだ」

 旅暮らしの者を放浪者(アウトロー)と呼ぶ。この者のように一人での旅は珍しい。大抵は複数の仲間と組み、旅をするものだ。

 彼はまだ若く、それにも関わらず我が出会った人間のなかでは最たる落ち着きをまとっていた。

[気に入った。今宵は我と酒を酌み交わそうぞ]

 我がそういうと、青年は空を仰ぎ、カルクカンに提げている酒瓶を見やった。

「期待しているのか」

[当然だ]

 陽はまだ高い。兎を狩るには充分な時間がある。

[そなた。名は]

「シレア」

[我はヴァラオム。よしなに]

 シレアは弓を取り出し、草原を見渡した。聞けば二十二歳と言うではないか。まだまだ青い年頃だ。

 さて、彼の兎汁はいかな味か。