「人間とはあい難解である」

「私たちにとっては、お前たちドラゴンの方が難解だ」

 なんだって私などにつきまとうのか。そうつぶやいて溜息を吐くシレアに我は鼻を鳴らす。

「そなたは美しく聡明である」

 それだけで理由は充分である。

「訳がわからん」

「安心せよ。そう長くはつきまとわぬゆえ」

 いつまでもそなたの旅の邪魔はせぬ。

「ならいいが」

 そうして降り始めた空を一瞥し、近くに見えた森を足早に目指した。

 この者との旅はとても楽しくはある。しかれど、我とて長居は出来ぬ身だ。我の役割は、シレアと共に旅をする事ではないと理解しておる。

 この旅は、ひとときの休息なのだ。人間をより深く理解する事にもつながっている。

 我にとって、たいへん満足のいくものとなった。

 シレアという人間は、ほんに不思議な若者よ。