「そなたは根っからのエルドシータやもしれぬな」

 馬を呼び戻し、旅を再開した我は先ほどの出来事を思い起こした。

「一定の場所から離れようとはしなかった」

 あのワイバーンが母であった事など、普通なればそう簡単に解るものではない。しかれど、シレアはあの短時間のうちにそれに気付き、母であるという考えにまで至った。

「この世界に生を受けたことに理由はなくとも、生きている理由はそれぞれに存在する」

 エルドシータとは、部族などが持つ特技や特異なものではない。伝えられ引き継がれ、より良くあれと発展してきた「教え」そのものだ。

 その本流を汲み、活かし、貫き通す者こそが、そう呼ばれる資格があるのやもしれぬ。

 自然を友とする者。世界と共に歩む者──それがエルドシータだ。