ワイバーンの尾には毒の棘がある。毒の威力は麻痺させるだけものや、即座に死に至らしめるものまで棲んでいる地域によって異なる。

 強敵が現れたとき、あの毒は重宝するであろう。

 そういった意味でシレアが欲するのも理解はすれど、先に出た言葉がそれでは、なんとも夢がない。

「まあよい」

 我は馬から降り、元の姿に戻りてワイバーンを呼び寄せた。その通り、ワイバーンはこちらに近づいてくる。

「だめだ」

 シレアはそう発しカルクカンを左に走らせた。

 何が起こったのかと思いきや、ワイバーンが我に食らいつこうと牙を剥き、紙一重でそれをかわすとそやつはシレアに向かって飛んでいきおった。

[どういう事なのか]

 慌てて追いかけるも、そのワイバーンは我の言葉などまったく聞く耳を持たず執拗にシレアを噛み砕かんと幾度も口を開けては閉じておるではないか。

[シレア!]