──朝になり森に入ると、真っ直ぐな木々が乱立し薄暗い空間を作り出していた。

 その一本一本が太く、頑丈でヴァラオム程度のドラゴンでは炎の息(ブレス)で燃やす事は出来ても、簡単に折り倒せそうにはない。

「うぬ。これでは空からも見えぬな」

 立ち並ぶ木々の間は狭くもなく広くもなく。ドラゴンに戻って飛ぶには、いささか難儀であるため狩りは人の姿で協力する事となった。

「前に鹿がいる」

「どこに」

 何も見えぬと目を凝らす。すると、暗がりに小さな影がぽつんとあったではないか。よくもあの距離で見えたものだ。

 シレアは弓を持ち、慎重に足を進める。そういえば、彼の弓は見慣れない質感をしておる。

 長さも短めだと感じるも、おそらく素材が普通のものではないのだろう。装飾も塗りも施されてはいないが、見事な造りである。