──食べ終わると、シレアは雨水の入っている革袋を手にして少量を鍋に注いだ。馬の毛で出来たブラシで汚れを落とし、食器も同じように洗う。
思えば、このような様子も久方ぶりに間近で見る。我を恐れず、共に旅をする者は少ない。
ソーズワースは呑気に草を食(は)んでおる。
この一帯は町が近いこともあり、危険な獣はあまり見かけぬ。近いと言えども、半日はかかるものだが。
東には森があり、明日にはあそこを通り抜ける折に鹿を狩る。
ああ、鹿鍋が待ち遠しい。ただ焼くだけでも美味いものである。
兎と違い鹿は大きいのだから、食べ方も増えるというものである。ドラゴンに戻り、頭を骨ごと生で食すのもまた良しである。
片付けを終えて腹も落ち着いた頃、おもむろにシレアが立ち上がった。
静かに眼前を見つめ、腰にある剣の柄を握って目を閉じる。
これは、もしや──