──しばらくして、ヴァラオムはあまりの美味そうな香りにシレアがかき混ぜている鍋を覗き込む。

「飯は出来たか」

 こやつと出会って最も良かったと思えるひとときである。

 干した肉を細かく裂いて入れると、程よい塩加減で無駄な味付けは必要がない。

 それだけ、シレアの作る干し肉は美味いのだ。

 食事を楽しみに狩りにも力がこもるというものである。

 二人分を作らねばならない事に不満を漏らしておるが、我もしかと狩りには協力しておるのだから文句を言うでない。

 ドラゴンに戻らず食べる事を良しとすればいいのだ。

「当然だ」

 ドラゴンに戻って食べられてはたまったものではない。

 またも不満げに言いおる。ドラゴンに戻ればその鍋一つではまったく足りぬ。故に人のまま食してやるのだ。