人間が誕生して数万年あまり。

 彼らはまだ若く脆弱なれど、驚くほどの繁栄を成している。

 数多(あまた)の戦(いくさ)を繰り返し、血を流し、自分たちの住処を広げている。

 好戦的であるがしかし、穏やかでもある。

 彼らはこの世に誕生したばかりで若いのだ。混沌とした時代が必要なのだろう。

 他の種族もそれなりに多くのものと戦い、住処を確立してきた。

 人間のそれは多大なれど、それもまたこの世の理(ことわり)である。

 ──それも落ち着いてきた頃、世界は次の段階に移るべく古の種族たちは徐々に衰退していった。

 その先頭を切ったのは最も古い種族「ロデュウ」であった。

 彼らは人間と似た容姿ではあるが強力な魔法を繰(く)り、その生命はエルフよりも長い。

 しかれども、それ故におおらかな性格が災いしたのか、自然の淘汰に抗うことなく滅びてしまった。

 人間にかまけている間にロデュウはいなくなってしもうた。こんなことなら、もっと接していれば良かったと口惜しさが募る。


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