はたと気付けば、すでにまともに立っている野盗はおらず。その死肉を貪るべく、数頭の獣が遠巻きに眺めておった。

「予定が狂った」

 不満げにつぶやくシレアにカルクカンが頭をすり寄せる。

「馬を呼び戻せ」

「そうであった」

 野盗の襲撃に馬が逃げてしもうたのだ。

 よく慣らされているカルクカンを見つつ、我は再び指笛を鳴らし旅の共とする馬を呼び寄せた。

「名はなんと言ったか」

「ソーズワースだ」

「良い名だ」

 人語が理解出来るのかは解らぬが、ソーズワースは嬉しげにクルルと鳴いた。