「そなた。ドラゴンの変身を見たことは──」

「ない」

 それで何故に少しも驚かぬ。この者には人としての感情はあるのか。エルフでももう少し感情の動きはあるだろうに。

「私はよく、人形のようだと言われる」

 我の思考を察したのか、シレアは独り言のように発した。

「人形ならば、そのような顔はせぬ」

 言われたことに心を痛めたのか、そう発した者に切なさを感じたのかは解らぬ。されど、この者の心は冷たいものではない。

 無表情に見えるなかでその瞳だけは、どこかしら物憂げに揺らめいている。

 我は、この者をもっと知りたいという衝動に駆られた。今に至るまでの道程(みちのり)を、我は知りたいのだ──