キスは甘い蜜の味

「結城拓真です、よろしくお願いします」

視線が痛い。

拓真ではなく、あたしを見ているのだ。

「じゃあ、結城の席は、望月の隣だ。望月、案内頼むぞ」

あたしは頷いて、席に移動した。

「咲蘭の席って、窓際なんだな」

〈人が怖いし、関わりたくないし、喋れないから〉

「そっか」

あたしの席は、一番後ろの窓際だ。

「じゃー、授業始めるぞー」

確か一時間目は、数学だったはず。

数学は、苦手な教科の一つだ。

「咲蘭、数学苦手なんだろ?」