ああっ………どうしよう、家に帰れない。

 藤堂さんは項垂れた私を哀れそうに見た後、時計をちらりと見た。

 「落ち込んてるところ悪いけど、今日は 君の通う凰凜(オウリン)高校の授業があるんだ。そろそろ準備しないと」
 
 「私、どうなっちゃうんですか?」
 
 「うーん、どうなるかは後で話すね。
   
   それじゃあお願いします。」


 藤堂さんが部屋を出ていく。するとそのドアから複数の女性が出てきた。

 あれよあれよと言う間に服を脱がされ、胸にきつく布を巻かれ、男性用のウィッグを………って、ちょ、ちょっとまって!これって………!


 役目を終えて女性たちが帰っていく中、私は鏡の前で膝をついた。
 
 鏡に映るのは黒い短髪の髪にストライプのネクタイ、そしてチェクのズボン。
 
 典型的な男子校生の服装。

 どうして………どうして私が
こんな格好に………。

 「よく似合ってるよ……うん…。」

 気遣わしげに藤堂さんが声をかけてきた。
 しかし私は顔をあげられない。やっと出た言葉は………

「…………か……。」

 「何を言ってるの?もしもし?…………                         大丈夫?」
 
 藤堂さんが私の顔を覗き込む。
 
 そこで私はガバッと顔を上げた。

 「どうしてですかと聞いてるんじゃないですか! どうして男装なんですか!」
 
 「事情は後で。とにかく今日は送るから車に乗って。初日で遅刻はかなり目立つよ。」 と、半ば強制的に車に連行されてしまった。