「なんだか説明が難しいのだけど、実はここは君が知っている世界とは違うんだ。君は『青春の暁』という小説を知っているかい? 今、君と僕がいるのはその世界なんだ。」

  青春の暁………私の大好きな小説だ……

 「私はどうしてこの世界に?」
  
 「物語をハッピーエンドで完結させるためだよ。君はこの物語を終わらせなきゃならないんだ。」
 
 何それ、一体何の冗談だろう?
 私が物語を終わらせる?なんじゃそりゃ

 「ごめんなさい。何のことか理解できません。とりあえず家に帰らせてもらえませんか。」
 
 早口で言うと、藤堂さんは少し困った顔をしていった。
 
 「ごめんねー。君は役目を果たすまで帰れないんだよ。」
 
 「向こうでしなくちゃいけないことがあるんです!テストの日だって近いし……。」

 「うーん。そういうことは山城さんにいってほしいなぁ。僕は頼まれただけだから……。」

 ヤマシロ……山城………!?
 
 「『青春の暁』を書いたあの山城アキさんですか!? その人と話せば私は帰れるんですね。 どこにいるんですか?」
 
 「いやー。僕も山城さんとは夢の中で頼まれったきり会ってないんだよ。」
  
 夢ってなに!?それじゃあ山城さんと話すなんてほとんど不可能に近いってわけ!?