ここに来る前から思ってたけど、この学校って何もかも豪華過ぎるよね……。
確かにどこの学食もスタミナ系ばかりで
バリエーションに乏しいってわけじゃないかもしれないけど
これはないよね
目の前に広がるのは純白のクロスがしかれた上品な丸いテーブルたち。
そして、生徒たちに給仕するウェイトレスさんに、当たり前のようにそれを受ける生徒たち。
ああ、レベルが違う。私には無理。
その場でくるりと向きを変えて引き返そうとしたその刹那、ピタリと目の前の少年と目があった。
「あれ、君って桜田だよね。
どうしたの?食べないの?」
なんだろ、この感じ。まるでどこかであったことのあるような……私はこの人を知っている。
「…………優………?」
優らしき人はこちらをじっと見つめた。
その時間は一秒もなかったかもしれない。
でも、私には永遠に感じられた。
「ご、ごめんなさい、人違いですよね
失礼しました。」
完全な人違いだ。恥ずかしさからか顔がどんどん熱くなってきた。心なしか鼓動も早い。
私はいたたまれなくなって早足でその場から去ろうとしたが、次の瞬間、手首を掴まれて私の体は硬直した。
「いや、合ってるよ。ただ、顔も合わせてないのに、もう覚えてくれたのかって思って。」
手首から伝わる手のひらの逞しさ、大人っぽいその笑顔、ああ、やっぱりこの人が優なんだ、そう思った。
「……あ、いや、誰かが呼んでたのをたまたま聞いてただけです。」
「………そっか。これから一緒にランチは
どうかな?俺たちまだだから。桜田も
でしょ?」
「えっと、そうなんだけど……。」
この歳で、この場所で、ナイフとフォークを使えないだなんて言えるだろうか。
「おい、優、こいつ桜田か?」
「ああ、一緒に食べようって誘った。」
いつの間にか来た瞬が怪訝な顔をして立っていた。
「いえ、わた、じゃなくて僕、はいいの でお二人でランチしてください。」
「いいのいいの、みんなで食べよう。」
と優は言い、私と瞬の肩をガッチリ組んでテーブルまで連れて行った。
その時、耳元で「アイツいつも物騒な顔してるけど気にしないで。」と囁かれ、顔がカッと熱くなるのが自分でもわかった。

