移ろいゆくもの、変わらないもの

                         


一歩踏み出すごとに、かかとの高いヒール特有の、コツコツという音が鳴り響く。




「…わ、変わったなぁ…」



都会とは違って狭い駅を出ると、記憶の中にあった田んぼや畑などはもうほとんど残っておらず、7年前は無かった、24時間営業と書かれたコンビニの看板が目に入った。



道路も綺麗に整備されていて、昔のように草が伸びきった、いかにも田舎、みたいな道路ではなくなっている。



まだ都会ほどの自然の少なさではないけど、7年前のあの自然の多さでもなかった。



スマホを出し、借りることになっている中学校の近くのアパートの場所を検索する。

7年前は学校の近くにアパートなんか無かったから、これも新しく出来たものなんだろう。
アパートの住人は、私以外に3人しかいないと説明を受けたから、人口が少ないことは変わってないんだろうけど。



スマホの画面に写った地図を、頭に叩き込む。

学校の方……裏門側だ。
駅から学校までの道は、なんとなく覚えてる。


でも、こんなに変わってしまった景色じゃ、目印も見つけられなさそうだ。



迷ったら怖いから、スマホはつけたまま歩き出す。

昔のように足元でじゃり、という音が鳴ることはなく、代わりにヒールのかかとがカツン、と音をたてた。



ふわりと吹いてきた春風で、乱れた髪を押さえる。



コンビニの横を抜けて歩いて行くと、7年前は友達とよく入り浸った、駄菓子屋さんだった場所が見えた。

今はオシャレな喫茶店に変わっていて、何とも言えない、寂しい気持ちが押し上げる。





ずいぶんと変わってしまったこの場所はもう、私の知っている村ではなくて。



たった7年で、こんなにも変わってしまうんだ。







ふう、と吐き出した息は、春風に流され、空気に溶けた。