移ろいゆくもの、変わらないもの

                         


午前7時。

朝の澄んだ空気が、部屋の中へと流れ込んでくる。

部屋を出て左に行けばすぐ、104号室だ。

インターホンがあったため、とりあえず押してみる。

ピンポン、という音はしなかった。中でしか鳴らないタイプのものらしい。

こういうのって、ちゃんと押せてるのか不安になるんだよね、とか思いながらしばらく待つも、誰も出ない。

流風にかぎって居留守はありえないだろう。むしろ彼は、変な勧誘とかでも普通に出ちゃいそうで心配。

出掛けているのか、まだ寝ているのか。 

もう一度インターホンを鳴らすも、結果は同じだった。

ドアノブに手をかけても、ドアは当たり前に鍵がかかっている。


……何か、嫌な、予感がした。




「流風?」


ドアの向こうに、声をかける。

人の気配は、一切ない。

それはつまり、彼は出掛けているのだろうけど。


なのに、どうしてか。


──怖い。


流風が、いなくなってしまったような。

昨日の彼が、夢だったような。



「流風!」


今度は声を大きくして、呼びかける。


きっと彼は、出掛けているだけなのに。

なのに。なんで、こんなに。





──お願いだから、返事を、して。