「ねえ二人とも」


二人に向かって声をかける。

よっくんが、私の真面目な声に、目を瞬かせた。


「どうしたの?」


真面目に聞いてくれるらしいくるみんが、首を傾げる。





「……恋って、なんだろ」





その一言に、よっくんが頬を染めた。女子か。


「ええっ!?何その質問!」


「ほのちゃん好きな人できたの!?」


くるみんが、なぜか楽しそうに笑う。

私はあわてて、そんなんじゃないよ、と返した。


「……よくわかんないの」


──I love you the most in the world.


この一言が本当なら。

そう思うと嬉しくて、胸が高鳴る。

でもそれは、突然言われたからなのかもしれなくて、恋じゃないのかもしれない。
ただ純粋に、人生初の告白(?)が嬉しかっただけなのかもしれない。


だってあんな、夢のようなセリフを言われたら。

あんなセリフ、誰だってきっと。






「……告白の幻聴とかって聞こえたりするのかなぁ」


「へ!?な、どういうこと!?」


よっくんはこういう話に疎いらしい。

分かりやすくあわてたように、頬を真っ赤にして混乱している。

一方くるみんは、うーん、と真剣に考えてくれた。


「聞こえてくることなんてあるのかな…」


でもさ、もし幻聴で聞こえたんだとしたらさ。


そう言って彼女は、いたずらっぽく笑う。



「きっとほのちゃんは、その人の”好き”って言葉が聞きたかったんだね」




予想の斜め上から来た言葉に、思わずえ?と声が漏れた。

くるみんは、にこにこと笑ったまま。


「だって、何とも思ってない人に好きって言われる幻聴聞くわけないし。もし何とも思ってない人に言われたんなら、それはたぶん現実だよ」


何だかよくわからなかった。

でも何だか、その言葉はするりと頭に入ってきて。





──私が、流風を好きだから。


流風に好きだと、言って欲しかったから。




だからきっと、流風が私を好きだと言ってくれる、夢を見たんだ。






──私は、流風が好き。



自覚してしまえばもう、あとからあとからそれを裏付けるかのように、いろいろなことが頭を駆け巡った。





流風と話している、他愛のない時間が好き。


くしゃりと笑う、あの顔が好き。


耳に心地良い、低めの声が好き。





「……そう、かもね」





──中学3年生の春。



夕焼け空の下、私はようやく初恋を自覚した。