「では問題です」
「えええ!?」
突然の問題宣言に驚いて声をあげると、流風は楽しそうに笑った。
「laugh.どういう意味でしょう」
「笑う、でしょ?」
今日のテストの範囲だ。確か、感情を表す英単語、みたいな…。
当たり、と笑った流風が、じゃあ次…と教科書に目を落とす。
「sadは?」
「悲しい!」
流風の発する英語は綺麗だ。
私は流風の話す英語が好き。なめらかで流れるようなその英語が。
「じゃあ……love」
「……愛してる」
流風が何だか恥ずかしそうに言うから、私まで恥ずかしくなってしまう。
小さくそう答えたところで、チャイムが鳴った。
流風が教科書を閉じる。
私はやば、と呟き、リュックを持って席を立った。
──そのとき。
「──I love you the most in the world.」
そんな小さなささやきが、耳に入る。
流風を振り向いてみても、彼はもう前を向いていた。
──確かに聞こえた気がしたけれど…気の、せい…?
……でも、今のって。今のがもし、本当に流風が言った言葉なら。
──世界で一番、君を愛してる。


